今日の俳句(季題)名句・秀句 2013年(平成25年)

今日の俳句(季題)名句・秀句 2013年(平成25年)

◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆


              《 4 月 》

4月1日(月)
 四月/今日の俳句 第1240号
   四月白樺の雨に燕の巣がにほふ
      飯田龍太
   四月モニュメント好きな市民と子雀と
      後藤比奈夫
4月2日(火)
 春暁/今日の俳句 第1241号
   春暁やまだ一言ももの言はず
      倉田絋文
   春暁や雨のあらひし松の幹
      久保田万太郎
   春暁の水に映りて鶯翔べり
      佐々信一郎
4月3日(水)
 春昼/今日の俳句 第1242号
   春昼の匙おちてよき音たつる
      桂信子
   春昼やこぼるる花とちる花と
      小杉余子
   春昼をゆきて地主に低頭す
      伊丹三樹彦
4月4日(木)
 春の夕/今日の俳句 第1243号
   春ゆふべあまたのびつこ跳ねゆけり
      西東三鬼
   らちもなき春ゆうぐれの古刹出づ
      下村槐太
   浅草の楽はかなしき春夕
      戸枝京虎
4月5日(金)
 春の暮/今日の俳句 第1244号
   春の暮汚れ流るゝ音澄めり
      日野晏子
   いづかたも水行く途中春の暮
      永田耕衣
   遠きより山かげ消ゆる春の暮
      相馬遷子
4月6日(土)
  春の宵/今日の俳句 第1245号
   宵の食卓かこむ一人欠けし
      内藤吐天
   春宵や自治会の議事もめて居り
      酒井信四郎
   春の宵歯痛の歯ぐき押してみる
      徳川夢声
4月7日(日)
 春の夜/今日の俳句 第1246号
   春の夜のはたてにまはる燈台あり
      篠原梵
   春の夜や灯を囲み居る盲者達
      村上鬼城
   春の夜や寝し子のふくよかに
      渡辺桂子
4月8日(月)
 暖か/今日の俳句 第1247号
   あたたかくたんぽぽの花茎の上
      長谷川素逝
   暖かし好遇されて居る如し
      相生垣瓜人
   暖かや飴の中から桃太郎
      川端茅舎
4月9日(火)
  麗か/今日の俳句 第1248号
   うららかや空より青き流れあり
      安部みどり女
   伽陀の声麗かや幻花昼を満つ
      広江八重桜
   遠く来るうらゝの汝を想ひけり
      田畑比古
4月10日(水)
 長閑/今日の俳句 第1249号
   花過ぎの心長閑や煙草盆
      岡野知十
   長閑なる水暮れて湖中灯ともれり
      河東碧梧桐
   のどかさに寝てしまひけり草の上
      松根東洋城
4月11日(木)
  日永/今日の俳句 第1250号
   永き日のにはとり柵を越えにけり
      芝不器男
   永き日の暮るる方へと草の道
      甲田鐘一路
   永き日や石ぬけ落る愛宕
      湯本希杖
4月12日(金)
 遅日/今日の俳句 第1251号
   生簀籠波間に受ける遅日かな
      鈴木真砂女
   暮れおそき草木の影をふみにけり
      五十崎古郷
   戸を開けて子を呼んでいる遅日かな
      千葉皓史
4月13日(土)
 花冷え/今日の俳句 第1252号
   花冷に欅はけぶる月夜かな
      渡辺水巴
   花冷や目薬をさす夕ごころ
      横光利一
   花冷の夕べ日当る襖かな
      岸田稚魚
4月14日(日)
 鰊(にしん)/今日の俳句 第1253号
   鰊来る気配に曇る雄久岬
      岡本昼虹
   坑夫くる青く大きな鰊ぶらさげ
      高橋葦男
   鰊焼く焔が皮に移り燃ゆ
      田川飛旅子
4月15日(月)
 鰆(さわら)/今日の俳句 第1254号
   鰆舟瀬戸口を出て暮光を負ふ
      西村公鳳
   鰆一匹とどけくれたり法事かな
      高島茂
   鰆釣り紀州の鼻は切れて見えゆ
      小山白楢
4月16日(火)
 さより(竹魚)/今日の俳句 第1255号
   青空の映れる水に針魚みゆ
      長谷川櫂
   ちりやすくあつまりやすくサヨリらは
      篠原梵
   なほいくつ江の奥指すや針魚舟
      村上光子
4月17日(水)
 白魚/今日の俳句 第1256号
   白魚火や国引せしといふ海に
      阿波野青畝
   昼深く生ける白魚をすすり食ふ
      五所平之助
   白魚のさかなたること略しけり
      中原道夫
4月18日(木)
 鱒(ます)/今日の俳句 第1257号
   鱒の子はすでに紅らむほとゝぎす
      石田波郷
   ふるさとを見捨てさせない鱒のすし
      永井耶摩男
   吊れすぎて財布気になる鱒釣り場
      新海照弘
4月19日(金)
 諸子(もろこ)/今日の俳句 第1258号
   弁慶に刺せるは諸子ばかりかな
      結城美津女
   火にのせて草のにほひす初諸子
      森澄雄
   諸子焼く春の夕べとなりにけり
      角川春樹
4月20日(土)
 公魚(わかさぎ)/今日の俳句 第1259号
   わかさぎを薄味に煮て暮色くる
      桂信子
   わかさぎ生死(しょうじ)どちらも胴を曲げ
      宇多喜代子
   公魚の受精卵はや濁りをり
      野末たくニ
4月21日(日)
 桜鰔(さくらうぐい)/今日の俳句 第1260号
   一身を緋にみごもれるうぐひかな
      小林?子
   水ほのぼの桜鰔の過ぐるとき
      山崎みのる
    なかなかに決まらぬ見合花うぐい
      石口光子
4月22日(月)
 柳鮠(やなぎはえ)/今日の俳句 第1261号
   鮠透けり富士湧水を雲流れ
      山本陽子
   水門に少年の日の柳鮠
      川端茅舎
   山下りて逃げゆく水や柳鮠
      清水基吉
4月23日(火)
 乗込鮒/今日の俳句 第1262号
   春鮒釣り硝子戸のある家に帰る
      加倉井秋を
   乗込鮒枯葉藻屑をかきわけて
      沢木欣一
   疾風波鮒乗込むをはばみけり
      内山亜川
4月24日(水)
  若鮎/今日の俳句 第1263号
   若鮎のうす墨の香を一夜の灯
      渡辺桂子
   水匂ふとは上り鮎匂ふこと
      藤崎久を
   次々と水に刺さりて上り鮎
      小島健
4月25日(木)
  蛍烏賊/今日の俳句 第1264号
   蛍烏賊松風陸を離れざる
      金尾梅の門
   父の忌の町に出初めし蛍烏賊
      沢木欣一
   蛍烏賊光る方へと舟かしぐ
      廣野寛子
4月26日(金)
  花烏賊/今日の俳句 第1265号
   花烏賊の甲羅を舟のごと浮かし
      長谷川かな女
   花烏賊や足投げ出して女学生
      矢野椎人
   洗ひたる花烏賊をすこし吐き
      高濱虚子
4月27日(土)
 飯蛸/今日の俳句 第1266号
   夕澄みて飯蛸泳ぐ舟のうち
      堀口星眠
   飯蛸の飯詰まりしもの選び買ふ
      赤木日出子
   飯蛸をつかめば夢のごと逃ぐる
      澤本三乗
4月28日(日)
 栄螺(さざえ)/今日の俳句 第1267号
   生栄螺しこしこ噛んで夜の怒涛
      鈴木真砂女
   しんかんと栄螺の籠の十(とお)ばかり
      飯田龍太
   どこ置いても栄螺の殻は安定す
      加倉井秋を
4月29日(月)
 蛤(はまぐり)/今日の俳句 第1268号
   南【みんなみ】に海蛤のすまし汁
      大野林火
   焼蛤の香を旗風が潮風が
      佐々木久
   蛤のなかに入ってあそびたし
      長浜勤
4月30日(火)
 浅蜊/今日の俳句 第1269号
   浅蜊に水いっぱい張って熟睡す
      菖蒲あや
   母の忌の浅蜊ちひさく鳴きにけり
      永島理江子
   浅蜊船ゆさりゆさりと戻りけり
      野口文吾


【PR】□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 「和井弘希の文芸政談」に掲載した俳句集
 http://www.mag2.com/m/M0095690.html