今日の俳句(季題)名句・秀句 2013年(平成25年)《 3 月 》

 今日の俳句(季題)名句・秀句 2013年(平成25年)

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              《 3 月 》
3月1日(金)
 頬白(ほおじろ)/今日の俳句 第1209号
   麦熟るゝ野に頬白のこゑひとつ
      瀧春一
   切株をたつ頬白の一呼吸
      堀口星眠
   頬白やひとこぼれして散り散りに
      川端茅舎

3月2日(土)
  雛市/今日の俳句 第1210号
   人間のまなこに出逢う雛の市
      深谷友香
   もとめずも心足らひぬ雛の市 
      及川貞
   飴も売りにはかに雛の店となる
      古館曹人

3月3日(日)
  ひな祭/今日の俳句 第1211号
   厨房に貝が歩くよ雛祭
      秋元不死男
   貝がらは縞の柄着て雛祭
      鷹羽狩行
   白き粥かがやく雛の日とおもふ
      桂信子

3月4日(月)
 雛流し/今日の俳句 第1212号
   終夜潮騒雛は流されつづけゐむ
      松本 明
   流し雛波音に耳慣れてきて
      荒井八雪
   櫂が欲し櫓が欲し加太の雛流し
      下村梅子

3月5日(火)
 雛納め/今日の俳句 第1213号
   雛納めして美しき障子かな
      山崎冨美子
   雛納めしたる正座でありしかな
      福井隆子
   惜しみつつ惜しみつつ雛納めけり
      山田六甲

3月6日(水)
 鶏合(とりあわせ)/今日の俳句 第1214号
   闘鶏の抱かれて蹴爪たたみけり
      宮岡計次
   闘鶏のかすかなる血を浴びにけり
      中西夕紀
   勝鶏を抱き昂ぶりを分ち合う
      村山白朗

3月7日(木)
 雁風呂(がんぶろ)/今日の俳句 第1215号
   落日に橋つつまれし空襲忌
      大牧広
   闘鶏のかすかなる血を浴びにけり
      中西夕紀
   勝鶏を抱き昂ぶりを分ち合う
      村山白朗

3月8日(金)
 椿/今日の俳句 第1216号
   ひとつ咲く酒中花はわが恋椿
      石田波郷
   はなびらの肉やはらかに落椿
      飯田蛇笏
   今落ちし椿温みのあるごとく
      有沢文枝

3月9日(土)
 紅梅/今日の俳句 第1217号
   紅梅へ顔寄す この世捨てきれず
      守田椰子夫
   蕾見てをり紅梅か白梅か
      鈴木須美生
   紅梅や誰となく先うながして
      晏梛みや子

3月10日(日)
 初桜/今日の俳句 第1218号
   初花の水にうつろふほどもなき
      日野草城
   初桜今を今こそ一大事
      小出秋光
   吉野箸指のやさしき初桜
      平崎千恵

3月11日(月)
 彼岸桜/今日の俳句 第1219号
   一本の彼岸桜が散歩の榮
      松崎鉄之介
   ひと息ひと息彼岸桜の開きゆく
      中嶋秀子
   咲きそめし彼岸桜のとどまらず
      稲畑汀子

3月12日(火)
  枝垂桜/今日の俳句 第1220号
   影は瀧空は花なり糸桜
      加賀千代女
   しだれつつこの世の花と咲きにけり
      藤田湘子
   糸桜言の葉つむぐやうに揺れ
      金藤優子

3月13日(水)
 桜/今日の俳句 第1221号
   ごはんつぶよく噛んでゐて桜咲く
      桂信子
   刺繍糸縺(もつ)れてよりのさくら冷
      山口貴志子
   桜前線微熱五体を通過して
      倉本岬

3月14日(木)
 花/今日の俳句 第1222号
   雪ならば花ならばなほわれは澄み
      八田木枯
   人体冷えて東北白い花盛り
      金子兜太
   桶の貝みな動きおり花の昼
      細木芒角星

3月15日(金)
 山桜/今日の俳句 第1223号
   二人してあの木この木と山桜
      矢島渚男
   山桜奥千本の迷い道
      白石みずき
   山桜西行の頭直撃す
      森下草城子

3月16日(土)
 八重桜/今日の俳句 第1224号
   満ち足らふことは美し八重桜
      富安風生
   八重桜逢ふ魔が刻を歩みけり
      柴田白葉女
   武蔵野はどこもふるさと八重桜
      松原地蔵尊

3月17日(日)
 遅桜/今日の俳句 第1225号
   遅ざくら残鴨瀞(とろ)にたゞよへる
      西島麦南
   遅桜修験の道は岩根道
      津田清子
   遅桜火の国は空けぶりたる
      古藤みづ絵

3月18日(月)
 落花/今日の俳句 第1226号
   ちるさくら海あをければ海へちる
      高屋窓秋
   花吹雪天にもありしけものみち
      たむらちせい
   花筏いそがず行けと俺に言う
      安藤今朝吉

3月19日(火)
 桜蘂降る(さくらしべふる) /今日の俳句 第1227号
   蘂のみのさくらとなりて夕日透く
      能村登四郎
   桜蘂散りつくづくと地べたなる
      宮澤明寿
   桜蘂降るあきらめないは彼のこと
      近藤千雅

3月20日(水)
 残花. /今日の俳句 第1228号
   人を見ぬ残花や山河くすくすと
      永田耕衣
   残桜の雫の色といふべけれ
      岩城久治
   残花舞ふ鳥が足蹴りにせし枝より
      太田光

3月21日(木)
 牡丹の芽 /今日の俳句 第1229号
   ビニールの姐様かむり牡丹の芽
      阿波野青畝
   牡丹の大いなる芽のつめたかり
      林徹
   待つといふことのゆたかさ牡丹の芽
      斉藤道子

3月22日(金)
 薔薇の芽/今日の俳句 第1230号
   茨の芽も皆々人に喰はれけり
      小林一茶
   薔薇の芽や校正のペンポケットに
      原田青児
   三歳のくすくす薔薇の芽と棘と
      松田ひろむ

3月23日(土)
 三茱萸の花(さんしゅゆのはな)/今日の俳句 第1231号
   三茱萸の花完結のなく続く
      後藤夜半
   さんしゅゆの花のこまかさ相ふれず
      長谷川素逝
   三茱萸の銀河系めくひろがりに
      鳥居おさむ

3月24日(日)
  白鳥帰る/今日の俳句 第1232号
   白鳥帰る一つ一つの生命にて
      加藤瑠璃子
   白鳥(スワン)去り鴨去り湖の真つ平ら
      河口仁志
   水底の泥に首さす子白鳥
      菊地恵子

3月25日(月)
 春の鴨/今日の俳句 第1233号
   船過ぎて鴨の円陣あとかたなし
      山口誓子
   鴨のこる池が真中競馬場
      飯島晴子
   こちら向けわれもひとりぞ残り鴨
      清水基吉

3月26日(火)
  鳥帰る/今日の俳句 第1234号
   鳥帰るいづこの窓も真顔見え
      今井聖
   鳥帰るいづこの空もさびしからむに
      安住敦
   鳥帰る此処は丹波の分水嶺
      水谷ひさ江

3月27日(水)
 鳥雲に入る/今日の俳句 第1235号
   鳥雲に忘れしことの限りなく 
      甲田鐘一路
   鳥雲に娘はトルストイなど読めり
      山口青邨

3月28日(木)
 囀(さえず)る/今日の俳句 第1236号
   囀やあはれなるほど喉ふくれ
      原石鼎
   囀りや明(あけ)しらむ方の雨の中
      松瀬青々
   囀りやピアノの上の薄埃
      島村元

3月29日(金)
  鳥交る/今日の俳句 第1237号
   雀交る倉あひの日がかんかんと
      金子麒麟
   茶を点てて遊べば軒の恋雀
      草間時彦
   鳥の恋峰より落つるこそ恋し
      清水径子

3月30日(土)
  雀の子/今日の俳句 第1238号
   子雀の上手にとぶよニ三尺
      梅沢墨水
   在原寺雀の子まだ飛べずして
      細見綾子
   モニュメント好きな市民と子雀と
      後藤比奈夫

3月31日(日)
  燕の巣/今日の俳句 第1239号
   何を見てもつまらぬ燕の巣を仰ぐ
      加倉井秋を
   白樺の雨に燕の巣がにほふ
      飯田龍太
   モニュメント好きな市民と子雀と
      後藤比奈夫