今日の俳句(季題)名句・秀句 2013年(平成25年)

 今日の俳句(2月)名句・秀句 2013年(平成25年)


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              《 2 月 》
2月1日(金)
 春/今日の俳句 第1181号
  挙手をしたまま春の秩父に眠る子よ
      夏石番矢
  老いの春死ぬ気はなくて死にたがる
      小出秋光
  さす・しめる・きる・もむ春の俎に
      中村ふみ

2月2日(土)
 二月/今日の俳句 第1182号
  安房二月コーヒー店も花あふれ
      新井英子
  ごつごつと音して二月過ぎにけり
      藤澤清子
  折鶴の紙にもどらぬ二月尽
      友松照子


2月3日(日)
 節分/今日の俳句 第1183号
   節分の宵の小門をくゞりけり
      杉田久女
   人が良いので節分の鬼の役
      武井康隆
   節分のひとかたまりの夜が動く
      海輪久子

2月4日(月)
 立春/今日の俳句 第1184号
   立春の地球を汚す犬うろうろ
      丸山佳子
   立春の卵立ちたる夫婦かな
      小宮山政子
   潮境くっきりと春立ちにけり
      木内怜子

2月5日(火)
 早春/今日の俳句 第1185号
   早春の風樹にひかり充ち充つごと
      赤城さかえ
   早春や藁一本に水曲がり          
      田中純
   早春のざわざわとする山河かな
      高橋将夫

2月6日(水)
 春浅し/今日の俳句 第1186号
   浅し一階上の遠景色
      中原幸子
   蝉塚といふ浅春の石ひとつ
      細川加賀
   春浅きポンペイの街時止まる
      渡部蜩硯

2月7日(木)
 冴返る/今日の俳句 第1187号
   冴返る午前三時の梁の音           
      長谷川通子
   壁を貼る手さばき密に冴返る       
      相沢有理子
   冴返るひときわ白いねこの耳         
      わたなべじゅんこ

2月8日(金)
 余寒/今日の俳句 第1188号
   ショパンいま余寒の胸になだれこむ   
      木之下みゆき
   余寒なほ午前零時の腕時計       
      小川廣男
   サイレンの散らばって行く余寒かな   
      杉山加代

2月9日(土)
 春寒/今日の俳句 第1189号
   はる寒く葱の折れふす畠かな
      炭太祇(たん・たいぎ)
   春寒や貝のはなさぬ海の砂
      いのうえかつこ
   春寒や竹の中なるかぐや姫
      日野草城

2月10日(日)
 遅春/今日の俳句 第1190号
   春遅々と山中節は闇ふかむ
      安澤静尾
   春遅し泉の末の倒れ木も
      石田波郷
   わが快き日妻すぐれぬ春遅々と
      富安風生

2月11日(月)
 春一番/今日の俳句 第1191号
   春一番写楽の顔で吹かれけり
      日下部宵三
   巻貝の奥に目覚めし春一番
      佐藤成之
   ラヴチュアのラヴおそろしき春一番
      加藤山査子

2月12日(火)
 梅/今日の俳句 第1192号
   天つ日に泡立つごとし谷の梅
      丸山佳子
   暗闇に猫の登りし梅匂ふ   
      横山房子
   故人との夢ばかり見て 梅便り
      伊丹三樹彦

2月13日(水)
 紅梅/今日の俳句 第1193号
   伊豆の海や紅梅の上に波ながれ  
      水原秋櫻子
   雀来て紅梅はまだこどもの木    
      成田千空
   紅梅や二人連れとは老いること   
      荒井民子

2月14日(木)
 バレンタインデー/今日の俳句 第1194号
   薔薇抱いてバレンタインといふ日かな
      友田美代
   バレンタインのチョコ携へて出講す
      山田みづえ
   バレンタインの日は老人でありにけり
      多田薙石

2月15日(金)
 春の馬/今日の俳句 第1195号
   耳袋の赤鮮しや春の駄馬
      沢木欣一
   日高嶺や跳ぶも憩ふも春の駒
      猪俣千代子
   馬の仔は跳ね牛の仔は伏せ牧場
      檜紀代

2月16日(土)
 春の鹿/今日の俳句 第1196号
   春の鹿角の尖まで静止して
      辻田克己
   泣ける児に片耳立てて孕鹿
      木庭一恵
   春の鹿まとへる闇の濃くならず
      宮坂静生

2月17日(日)
 落し角/今日の俳句 第1197号
   角落ちて小さくなりぬ鹿の顔
      吉田渭城
   角落ちて別の愛嬌鹿にあり
      猪俣千代子
   柳生街道笹原ふかくおとし角
      中村翠湖

2月18日(月)
 猫の恋/今日の俳句 第1198号
   恋猫の恋する猫で押し通す
      永田耕衣
   眼中に人間なくて恋の猫
      加藤瑠璃子
   傷つくとわかってゐても浮かれ猫
      高木喬

2月19日(火)
 猫の子/今日の俳句 第1199号
   子猫かなパルテノンなる陽だまりに 
      下山田禮子
   ふるへつつ子猫貰はれゆきにけり
      桂川美穂子
   かたまりの中より子猫覚めてきし
      森田桃村

2月20日(水)
 亀鳴く/今日の俳句 第1200号
   大丈夫づくめの話亀が鳴く 
      永井龍男
   眠れざる夜は桂郎の亀なけり
      神蔵器
   亀鳴くや人取池の月朧
      松根東洋城

2月21日(木)
 ]蛇穴を出づ/今日の俳句 第1201号
   蛇穴を出て今年はや轢かれたり
      竹中 宏
   蛇穴を出て校門を出てゆけり
      小西昭夫
   蛇穴を出てコーヒーを買いに行く
      村上哲史

2月22日(金)
 蝌蚪(かと・くわと)/今日の俳句 第1202号
   おたまじゃくしむかしむかしの陽をつれて
      櫻井博道
   言ひたきをふっと忘れて蝌蚪の紐
      水野あき子
   美人とはなべてふくよか蝌蚪の国
      岸田雨童

2月23日(土)
 春の土/今日の俳句 第1203号
   春の土荒れて筋ひく竹箒
      桂信子
   閼伽(あか)の水撒きて匂はす春の土
      松倉ゆずる
   手でほぐす土にも春の匂いかな
      細木芒角星

2月24日(日)
 鶯(うぐいす)/今日の俳句 第1204号
   うぐひすの次の声待つ吉祥天
      加藤知世子
   箸白く割るうぐいすに釜めしに
      山田岳星
   初音聞く世界遺産の原始林
      田中康委子

2月25日(月)
 雉(きじ)/今日の俳句 第1205号
   雉のあと雉の行きけり夕間暮
      井上信子
   大原や雉子なくあとの小糠雨
      巌谷小波
   雉啼くや胸ふかきより息一筋
      橋本多佳子

2月26日(火)
 雲雀/今日の俳句 第1206号
   海よりの風強し雲雀高くあり
      高柳重信
   乾きて草に沈むやゆふひばり
      加賀千代女
   雨の日は雨の雲雀のあがるなり
      安住敦

2月27日(水)
 麦鶉(むぎうずら)/今日の俳句 第1207号
   麦鶉畦をよぎりぬ庵の前
      鈴木花蓑
   睡る間に月夜は消えて麦鶉
      藤田湘子
   生ぬるき風のうるみや麦鶉
      瀬戸葩囁
2月28日(木)
 鷽(うそ)/今日の俳句 第1208号
   鷽鳴くや山頂きに真昼の日
      相馬遷子
   照鷽や吉備の乙女ら弓しぼる
      神蔵器
   鷽めぐる楡の裸木麗らなり
      堀口星眠