今日の俳句(季題)名句・秀句 2013年(平成25年)

今日の俳句(季題)名句・秀句 2013年(平成25年)

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              《 4 月 》

4月1日(月)
 四月/今日の俳句 第1240号
   四月白樺の雨に燕の巣がにほふ
      飯田龍太
   四月モニュメント好きな市民と子雀と
      後藤比奈夫
4月2日(火)
 春暁/今日の俳句 第1241号
   春暁やまだ一言ももの言はず
      倉田絋文
   春暁や雨のあらひし松の幹
      久保田万太郎
   春暁の水に映りて鶯翔べり
      佐々信一郎
4月3日(水)
 春昼/今日の俳句 第1242号
   春昼の匙おちてよき音たつる
      桂信子
   春昼やこぼるる花とちる花と
      小杉余子
   春昼をゆきて地主に低頭す
      伊丹三樹彦
4月4日(木)
 春の夕/今日の俳句 第1243号
   春ゆふべあまたのびつこ跳ねゆけり
      西東三鬼
   らちもなき春ゆうぐれの古刹出づ
      下村槐太
   浅草の楽はかなしき春夕
      戸枝京虎
4月5日(金)
 春の暮/今日の俳句 第1244号
   春の暮汚れ流るゝ音澄めり
      日野晏子
   いづかたも水行く途中春の暮
      永田耕衣
   遠きより山かげ消ゆる春の暮
      相馬遷子
4月6日(土)
  春の宵/今日の俳句 第1245号
   宵の食卓かこむ一人欠けし
      内藤吐天
   春宵や自治会の議事もめて居り
      酒井信四郎
   春の宵歯痛の歯ぐき押してみる
      徳川夢声
4月7日(日)
 春の夜/今日の俳句 第1246号
   春の夜のはたてにまはる燈台あり
      篠原梵
   春の夜や灯を囲み居る盲者達
      村上鬼城
   春の夜や寝し子のふくよかに
      渡辺桂子
4月8日(月)
 暖か/今日の俳句 第1247号
   あたたかくたんぽぽの花茎の上
      長谷川素逝
   暖かし好遇されて居る如し
      相生垣瓜人
   暖かや飴の中から桃太郎
      川端茅舎
4月9日(火)
  麗か/今日の俳句 第1248号
   うららかや空より青き流れあり
      安部みどり女
   伽陀の声麗かや幻花昼を満つ
      広江八重桜
   遠く来るうらゝの汝を想ひけり
      田畑比古
4月10日(水)
 長閑/今日の俳句 第1249号
   花過ぎの心長閑や煙草盆
      岡野知十
   長閑なる水暮れて湖中灯ともれり
      河東碧梧桐
   のどかさに寝てしまひけり草の上
      松根東洋城
4月11日(木)
  日永/今日の俳句 第1250号
   永き日のにはとり柵を越えにけり
      芝不器男
   永き日の暮るる方へと草の道
      甲田鐘一路
   永き日や石ぬけ落る愛宕
      湯本希杖
4月12日(金)
 遅日/今日の俳句 第1251号
   生簀籠波間に受ける遅日かな
      鈴木真砂女
   暮れおそき草木の影をふみにけり
      五十崎古郷
   戸を開けて子を呼んでいる遅日かな
      千葉皓史
4月13日(土)
 花冷え/今日の俳句 第1252号
   花冷に欅はけぶる月夜かな
      渡辺水巴
   花冷や目薬をさす夕ごころ
      横光利一
   花冷の夕べ日当る襖かな
      岸田稚魚
4月14日(日)
 鰊(にしん)/今日の俳句 第1253号
   鰊来る気配に曇る雄久岬
      岡本昼虹
   坑夫くる青く大きな鰊ぶらさげ
      高橋葦男
   鰊焼く焔が皮に移り燃ゆ
      田川飛旅子
4月15日(月)
 鰆(さわら)/今日の俳句 第1254号
   鰆舟瀬戸口を出て暮光を負ふ
      西村公鳳
   鰆一匹とどけくれたり法事かな
      高島茂
   鰆釣り紀州の鼻は切れて見えゆ
      小山白楢
4月16日(火)
 さより(竹魚)/今日の俳句 第1255号
   青空の映れる水に針魚みゆ
      長谷川櫂
   ちりやすくあつまりやすくサヨリらは
      篠原梵
   なほいくつ江の奥指すや針魚舟
      村上光子
4月17日(水)
 白魚/今日の俳句 第1256号
   白魚火や国引せしといふ海に
      阿波野青畝
   昼深く生ける白魚をすすり食ふ
      五所平之助
   白魚のさかなたること略しけり
      中原道夫
4月18日(木)
 鱒(ます)/今日の俳句 第1257号
   鱒の子はすでに紅らむほとゝぎす
      石田波郷
   ふるさとを見捨てさせない鱒のすし
      永井耶摩男
   吊れすぎて財布気になる鱒釣り場
      新海照弘
4月19日(金)
 諸子(もろこ)/今日の俳句 第1258号
   弁慶に刺せるは諸子ばかりかな
      結城美津女
   火にのせて草のにほひす初諸子
      森澄雄
   諸子焼く春の夕べとなりにけり
      角川春樹
4月20日(土)
 公魚(わかさぎ)/今日の俳句 第1259号
   わかさぎを薄味に煮て暮色くる
      桂信子
   わかさぎ生死(しょうじ)どちらも胴を曲げ
      宇多喜代子
   公魚の受精卵はや濁りをり
      野末たくニ
4月21日(日)
 桜鰔(さくらうぐい)/今日の俳句 第1260号
   一身を緋にみごもれるうぐひかな
      小林?子
   水ほのぼの桜鰔の過ぐるとき
      山崎みのる
    なかなかに決まらぬ見合花うぐい
      石口光子
4月22日(月)
 柳鮠(やなぎはえ)/今日の俳句 第1261号
   鮠透けり富士湧水を雲流れ
      山本陽子
   水門に少年の日の柳鮠
      川端茅舎
   山下りて逃げゆく水や柳鮠
      清水基吉
4月23日(火)
 乗込鮒/今日の俳句 第1262号
   春鮒釣り硝子戸のある家に帰る
      加倉井秋を
   乗込鮒枯葉藻屑をかきわけて
      沢木欣一
   疾風波鮒乗込むをはばみけり
      内山亜川
4月24日(水)
  若鮎/今日の俳句 第1263号
   若鮎のうす墨の香を一夜の灯
      渡辺桂子
   水匂ふとは上り鮎匂ふこと
      藤崎久を
   次々と水に刺さりて上り鮎
      小島健
4月25日(木)
  蛍烏賊/今日の俳句 第1264号
   蛍烏賊松風陸を離れざる
      金尾梅の門
   父の忌の町に出初めし蛍烏賊
      沢木欣一
   蛍烏賊光る方へと舟かしぐ
      廣野寛子
4月26日(金)
  花烏賊/今日の俳句 第1265号
   花烏賊の甲羅を舟のごと浮かし
      長谷川かな女
   花烏賊や足投げ出して女学生
      矢野椎人
   洗ひたる花烏賊をすこし吐き
      高濱虚子
4月27日(土)
 飯蛸/今日の俳句 第1266号
   夕澄みて飯蛸泳ぐ舟のうち
      堀口星眠
   飯蛸の飯詰まりしもの選び買ふ
      赤木日出子
   飯蛸をつかめば夢のごと逃ぐる
      澤本三乗
4月28日(日)
 栄螺(さざえ)/今日の俳句 第1267号
   生栄螺しこしこ噛んで夜の怒涛
      鈴木真砂女
   しんかんと栄螺の籠の十(とお)ばかり
      飯田龍太
   どこ置いても栄螺の殻は安定す
      加倉井秋を
4月29日(月)
 蛤(はまぐり)/今日の俳句 第1268号
   南【みんなみ】に海蛤のすまし汁
      大野林火
   焼蛤の香を旗風が潮風が
      佐々木久
   蛤のなかに入ってあそびたし
      長浜勤
4月30日(火)
 浅蜊/今日の俳句 第1269号
   浅蜊に水いっぱい張って熟睡す
      菖蒲あや
   母の忌の浅蜊ちひさく鳴きにけり
      永島理江子
   浅蜊船ゆさりゆさりと戻りけり
      野口文吾


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 「和井弘希の文芸政談」に掲載した俳句集
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今日の俳句(季題)名句・秀句 2013年(平成25年)《 3 月 》

 今日の俳句(季題)名句・秀句 2013年(平成25年)

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              《 3 月 》
3月1日(金)
 頬白(ほおじろ)/今日の俳句 第1209号
   麦熟るゝ野に頬白のこゑひとつ
      瀧春一
   切株をたつ頬白の一呼吸
      堀口星眠
   頬白やひとこぼれして散り散りに
      川端茅舎

3月2日(土)
  雛市/今日の俳句 第1210号
   人間のまなこに出逢う雛の市
      深谷友香
   もとめずも心足らひぬ雛の市 
      及川貞
   飴も売りにはかに雛の店となる
      古館曹人

3月3日(日)
  ひな祭/今日の俳句 第1211号
   厨房に貝が歩くよ雛祭
      秋元不死男
   貝がらは縞の柄着て雛祭
      鷹羽狩行
   白き粥かがやく雛の日とおもふ
      桂信子

3月4日(月)
 雛流し/今日の俳句 第1212号
   終夜潮騒雛は流されつづけゐむ
      松本 明
   流し雛波音に耳慣れてきて
      荒井八雪
   櫂が欲し櫓が欲し加太の雛流し
      下村梅子

3月5日(火)
 雛納め/今日の俳句 第1213号
   雛納めして美しき障子かな
      山崎冨美子
   雛納めしたる正座でありしかな
      福井隆子
   惜しみつつ惜しみつつ雛納めけり
      山田六甲

3月6日(水)
 鶏合(とりあわせ)/今日の俳句 第1214号
   闘鶏の抱かれて蹴爪たたみけり
      宮岡計次
   闘鶏のかすかなる血を浴びにけり
      中西夕紀
   勝鶏を抱き昂ぶりを分ち合う
      村山白朗

3月7日(木)
 雁風呂(がんぶろ)/今日の俳句 第1215号
   落日に橋つつまれし空襲忌
      大牧広
   闘鶏のかすかなる血を浴びにけり
      中西夕紀
   勝鶏を抱き昂ぶりを分ち合う
      村山白朗

3月8日(金)
 椿/今日の俳句 第1216号
   ひとつ咲く酒中花はわが恋椿
      石田波郷
   はなびらの肉やはらかに落椿
      飯田蛇笏
   今落ちし椿温みのあるごとく
      有沢文枝

3月9日(土)
 紅梅/今日の俳句 第1217号
   紅梅へ顔寄す この世捨てきれず
      守田椰子夫
   蕾見てをり紅梅か白梅か
      鈴木須美生
   紅梅や誰となく先うながして
      晏梛みや子

3月10日(日)
 初桜/今日の俳句 第1218号
   初花の水にうつろふほどもなき
      日野草城
   初桜今を今こそ一大事
      小出秋光
   吉野箸指のやさしき初桜
      平崎千恵

3月11日(月)
 彼岸桜/今日の俳句 第1219号
   一本の彼岸桜が散歩の榮
      松崎鉄之介
   ひと息ひと息彼岸桜の開きゆく
      中嶋秀子
   咲きそめし彼岸桜のとどまらず
      稲畑汀子

3月12日(火)
  枝垂桜/今日の俳句 第1220号
   影は瀧空は花なり糸桜
      加賀千代女
   しだれつつこの世の花と咲きにけり
      藤田湘子
   糸桜言の葉つむぐやうに揺れ
      金藤優子

3月13日(水)
 桜/今日の俳句 第1221号
   ごはんつぶよく噛んでゐて桜咲く
      桂信子
   刺繍糸縺(もつ)れてよりのさくら冷
      山口貴志子
   桜前線微熱五体を通過して
      倉本岬

3月14日(木)
 花/今日の俳句 第1222号
   雪ならば花ならばなほわれは澄み
      八田木枯
   人体冷えて東北白い花盛り
      金子兜太
   桶の貝みな動きおり花の昼
      細木芒角星

3月15日(金)
 山桜/今日の俳句 第1223号
   二人してあの木この木と山桜
      矢島渚男
   山桜奥千本の迷い道
      白石みずき
   山桜西行の頭直撃す
      森下草城子

3月16日(土)
 八重桜/今日の俳句 第1224号
   満ち足らふことは美し八重桜
      富安風生
   八重桜逢ふ魔が刻を歩みけり
      柴田白葉女
   武蔵野はどこもふるさと八重桜
      松原地蔵尊

3月17日(日)
 遅桜/今日の俳句 第1225号
   遅ざくら残鴨瀞(とろ)にたゞよへる
      西島麦南
   遅桜修験の道は岩根道
      津田清子
   遅桜火の国は空けぶりたる
      古藤みづ絵

3月18日(月)
 落花/今日の俳句 第1226号
   ちるさくら海あをければ海へちる
      高屋窓秋
   花吹雪天にもありしけものみち
      たむらちせい
   花筏いそがず行けと俺に言う
      安藤今朝吉

3月19日(火)
 桜蘂降る(さくらしべふる) /今日の俳句 第1227号
   蘂のみのさくらとなりて夕日透く
      能村登四郎
   桜蘂散りつくづくと地べたなる
      宮澤明寿
   桜蘂降るあきらめないは彼のこと
      近藤千雅

3月20日(水)
 残花. /今日の俳句 第1228号
   人を見ぬ残花や山河くすくすと
      永田耕衣
   残桜の雫の色といふべけれ
      岩城久治
   残花舞ふ鳥が足蹴りにせし枝より
      太田光

3月21日(木)
 牡丹の芽 /今日の俳句 第1229号
   ビニールの姐様かむり牡丹の芽
      阿波野青畝
   牡丹の大いなる芽のつめたかり
      林徹
   待つといふことのゆたかさ牡丹の芽
      斉藤道子

3月22日(金)
 薔薇の芽/今日の俳句 第1230号
   茨の芽も皆々人に喰はれけり
      小林一茶
   薔薇の芽や校正のペンポケットに
      原田青児
   三歳のくすくす薔薇の芽と棘と
      松田ひろむ

3月23日(土)
 三茱萸の花(さんしゅゆのはな)/今日の俳句 第1231号
   三茱萸の花完結のなく続く
      後藤夜半
   さんしゅゆの花のこまかさ相ふれず
      長谷川素逝
   三茱萸の銀河系めくひろがりに
      鳥居おさむ

3月24日(日)
  白鳥帰る/今日の俳句 第1232号
   白鳥帰る一つ一つの生命にて
      加藤瑠璃子
   白鳥(スワン)去り鴨去り湖の真つ平ら
      河口仁志
   水底の泥に首さす子白鳥
      菊地恵子

3月25日(月)
 春の鴨/今日の俳句 第1233号
   船過ぎて鴨の円陣あとかたなし
      山口誓子
   鴨のこる池が真中競馬場
      飯島晴子
   こちら向けわれもひとりぞ残り鴨
      清水基吉

3月26日(火)
  鳥帰る/今日の俳句 第1234号
   鳥帰るいづこの窓も真顔見え
      今井聖
   鳥帰るいづこの空もさびしからむに
      安住敦
   鳥帰る此処は丹波の分水嶺
      水谷ひさ江

3月27日(水)
 鳥雲に入る/今日の俳句 第1235号
   鳥雲に忘れしことの限りなく 
      甲田鐘一路
   鳥雲に娘はトルストイなど読めり
      山口青邨

3月28日(木)
 囀(さえず)る/今日の俳句 第1236号
   囀やあはれなるほど喉ふくれ
      原石鼎
   囀りや明(あけ)しらむ方の雨の中
      松瀬青々
   囀りやピアノの上の薄埃
      島村元

3月29日(金)
  鳥交る/今日の俳句 第1237号
   雀交る倉あひの日がかんかんと
      金子麒麟
   茶を点てて遊べば軒の恋雀
      草間時彦
   鳥の恋峰より落つるこそ恋し
      清水径子

3月30日(土)
  雀の子/今日の俳句 第1238号
   子雀の上手にとぶよニ三尺
      梅沢墨水
   在原寺雀の子まだ飛べずして
      細見綾子
   モニュメント好きな市民と子雀と
      後藤比奈夫

3月31日(日)
  燕の巣/今日の俳句 第1239号
   何を見てもつまらぬ燕の巣を仰ぐ
      加倉井秋を
   白樺の雨に燕の巣がにほふ
      飯田龍太
   モニュメント好きな市民と子雀と
      後藤比奈夫

 今日の俳句(季題)名句・秀句 2013年(平成25年)

 今日の俳句(2月)名句・秀句 2013年(平成25年)


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              《 2 月 》
2月1日(金)
 春/今日の俳句 第1181号
  挙手をしたまま春の秩父に眠る子よ
      夏石番矢
  老いの春死ぬ気はなくて死にたがる
      小出秋光
  さす・しめる・きる・もむ春の俎に
      中村ふみ

2月2日(土)
 二月/今日の俳句 第1182号
  安房二月コーヒー店も花あふれ
      新井英子
  ごつごつと音して二月過ぎにけり
      藤澤清子
  折鶴の紙にもどらぬ二月尽
      友松照子


2月3日(日)
 節分/今日の俳句 第1183号
   節分の宵の小門をくゞりけり
      杉田久女
   人が良いので節分の鬼の役
      武井康隆
   節分のひとかたまりの夜が動く
      海輪久子

2月4日(月)
 立春/今日の俳句 第1184号
   立春の地球を汚す犬うろうろ
      丸山佳子
   立春の卵立ちたる夫婦かな
      小宮山政子
   潮境くっきりと春立ちにけり
      木内怜子

2月5日(火)
 早春/今日の俳句 第1185号
   早春の風樹にひかり充ち充つごと
      赤城さかえ
   早春や藁一本に水曲がり          
      田中純
   早春のざわざわとする山河かな
      高橋将夫

2月6日(水)
 春浅し/今日の俳句 第1186号
   浅し一階上の遠景色
      中原幸子
   蝉塚といふ浅春の石ひとつ
      細川加賀
   春浅きポンペイの街時止まる
      渡部蜩硯

2月7日(木)
 冴返る/今日の俳句 第1187号
   冴返る午前三時の梁の音           
      長谷川通子
   壁を貼る手さばき密に冴返る       
      相沢有理子
   冴返るひときわ白いねこの耳         
      わたなべじゅんこ

2月8日(金)
 余寒/今日の俳句 第1188号
   ショパンいま余寒の胸になだれこむ   
      木之下みゆき
   余寒なほ午前零時の腕時計       
      小川廣男
   サイレンの散らばって行く余寒かな   
      杉山加代

2月9日(土)
 春寒/今日の俳句 第1189号
   はる寒く葱の折れふす畠かな
      炭太祇(たん・たいぎ)
   春寒や貝のはなさぬ海の砂
      いのうえかつこ
   春寒や竹の中なるかぐや姫
      日野草城

2月10日(日)
 遅春/今日の俳句 第1190号
   春遅々と山中節は闇ふかむ
      安澤静尾
   春遅し泉の末の倒れ木も
      石田波郷
   わが快き日妻すぐれぬ春遅々と
      富安風生

2月11日(月)
 春一番/今日の俳句 第1191号
   春一番写楽の顔で吹かれけり
      日下部宵三
   巻貝の奥に目覚めし春一番
      佐藤成之
   ラヴチュアのラヴおそろしき春一番
      加藤山査子

2月12日(火)
 梅/今日の俳句 第1192号
   天つ日に泡立つごとし谷の梅
      丸山佳子
   暗闇に猫の登りし梅匂ふ   
      横山房子
   故人との夢ばかり見て 梅便り
      伊丹三樹彦

2月13日(水)
 紅梅/今日の俳句 第1193号
   伊豆の海や紅梅の上に波ながれ  
      水原秋櫻子
   雀来て紅梅はまだこどもの木    
      成田千空
   紅梅や二人連れとは老いること   
      荒井民子

2月14日(木)
 バレンタインデー/今日の俳句 第1194号
   薔薇抱いてバレンタインといふ日かな
      友田美代
   バレンタインのチョコ携へて出講す
      山田みづえ
   バレンタインの日は老人でありにけり
      多田薙石

2月15日(金)
 春の馬/今日の俳句 第1195号
   耳袋の赤鮮しや春の駄馬
      沢木欣一
   日高嶺や跳ぶも憩ふも春の駒
      猪俣千代子
   馬の仔は跳ね牛の仔は伏せ牧場
      檜紀代

2月16日(土)
 春の鹿/今日の俳句 第1196号
   春の鹿角の尖まで静止して
      辻田克己
   泣ける児に片耳立てて孕鹿
      木庭一恵
   春の鹿まとへる闇の濃くならず
      宮坂静生

2月17日(日)
 落し角/今日の俳句 第1197号
   角落ちて小さくなりぬ鹿の顔
      吉田渭城
   角落ちて別の愛嬌鹿にあり
      猪俣千代子
   柳生街道笹原ふかくおとし角
      中村翠湖

2月18日(月)
 猫の恋/今日の俳句 第1198号
   恋猫の恋する猫で押し通す
      永田耕衣
   眼中に人間なくて恋の猫
      加藤瑠璃子
   傷つくとわかってゐても浮かれ猫
      高木喬

2月19日(火)
 猫の子/今日の俳句 第1199号
   子猫かなパルテノンなる陽だまりに 
      下山田禮子
   ふるへつつ子猫貰はれゆきにけり
      桂川美穂子
   かたまりの中より子猫覚めてきし
      森田桃村

2月20日(水)
 亀鳴く/今日の俳句 第1200号
   大丈夫づくめの話亀が鳴く 
      永井龍男
   眠れざる夜は桂郎の亀なけり
      神蔵器
   亀鳴くや人取池の月朧
      松根東洋城

2月21日(木)
 ]蛇穴を出づ/今日の俳句 第1201号
   蛇穴を出て今年はや轢かれたり
      竹中 宏
   蛇穴を出て校門を出てゆけり
      小西昭夫
   蛇穴を出てコーヒーを買いに行く
      村上哲史

2月22日(金)
 蝌蚪(かと・くわと)/今日の俳句 第1202号
   おたまじゃくしむかしむかしの陽をつれて
      櫻井博道
   言ひたきをふっと忘れて蝌蚪の紐
      水野あき子
   美人とはなべてふくよか蝌蚪の国
      岸田雨童

2月23日(土)
 春の土/今日の俳句 第1203号
   春の土荒れて筋ひく竹箒
      桂信子
   閼伽(あか)の水撒きて匂はす春の土
      松倉ゆずる
   手でほぐす土にも春の匂いかな
      細木芒角星

2月24日(日)
 鶯(うぐいす)/今日の俳句 第1204号
   うぐひすの次の声待つ吉祥天
      加藤知世子
   箸白く割るうぐいすに釜めしに
      山田岳星
   初音聞く世界遺産の原始林
      田中康委子

2月25日(月)
 雉(きじ)/今日の俳句 第1205号
   雉のあと雉の行きけり夕間暮
      井上信子
   大原や雉子なくあとの小糠雨
      巌谷小波
   雉啼くや胸ふかきより息一筋
      橋本多佳子

2月26日(火)
 雲雀/今日の俳句 第1206号
   海よりの風強し雲雀高くあり
      高柳重信
   乾きて草に沈むやゆふひばり
      加賀千代女
   雨の日は雨の雲雀のあがるなり
      安住敦

2月27日(水)
 麦鶉(むぎうずら)/今日の俳句 第1207号
   麦鶉畦をよぎりぬ庵の前
      鈴木花蓑
   睡る間に月夜は消えて麦鶉
      藤田湘子
   生ぬるき風のうるみや麦鶉
      瀬戸葩囁
2月28日(木)
 鷽(うそ)/今日の俳句 第1208号
   鷽鳴くや山頂きに真昼の日
      相馬遷子
   照鷽や吉備の乙女ら弓しぼる
      神蔵器
   鷽めぐる楡の裸木麗らなり
      堀口星眠

今日の俳句(季題)名句・秀句 2013年(平成25年)

今日の俳句(1月)名句・秀句 2013年(平成25年)《 1 月 》
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              《 1 月 》
1月1日(火)
       新年/今朝の俳句 ※No.1150※
        新年の壁に吊るせり草箒          穴井太
        杉落葉香りぞたかく年明けたり       加倉井秋を
年いよよ水のごとくに迎ふかな       大野林火

1月2日(水)
       初春/今日の俳句 ※No.1151※
         天秤や京江戸かけて千代の春      松尾芭蕉
         初春の河馬のお尻が四つほど      津田このみ
         初春や母にまぶしき仏間あり       角川春樹

1月3日(木)
      正月/今朝の俳句 ※No.1152※
        ふるさとや正月を啼く川原鶸(ひわ)    木下夕爾
        正月の白波を見て老夫婦          桂信子
        正月の地べたを使ふ遊びかな       茨木和生

1月4日(金)
今年/今日の俳句 ※No.1153※
        白波も今年の景となりゆけり        桂信子
        旅先に鶴見て今年はじまりぬ        鈴木真砂女
        くらがりに野鍛冶今年の火を起す     松本陽平

1月5日(土)
      去年今年/今日の俳句 ※No.1154※
        大いなる闇うごきだし去年今年       桂信子
        暗きより火種をはこぶ去年今年       柿本多映
去年今年集い鳴るかな船の笛        寺井谷子

1月6日(日)
      淑気(しゅくき)/今日の俳句 ※No.1155※
        衿替へて八十の母淑気満つ         山田みづえ
        筆先へ心音通ふ淑気かな          池田光子
        一湾の白浪綴る淑気かな           中村尭子

1月7日(月)
      七種粥/今日の俳句 ※No.1156※
        七草粥冷えそめたるはあはれかな    きくちつねこ
        風邪の児にすこし熱くて七日粥      田中一荷水
        吹くたびに緑まさりて七日粥        小沢初江

1月8日(火)
      松納(まつをさめ)/今日の俳句 ※No.1157※
        松取れて夕風遊ぶところなし       角川照子
        掃きならし門松とりし跡と見ゆ       亀井絲游
        安曇野の果ての見えをる松納       きちせあや

1月9日(水)
      鳥総松(とぶさのまつ)/今日の俳句 ※No.1158※
        星ひとつのこる大路や鳥総松       永田耕衣
        結び目のかたき故里鳥総松        小島花枝
        共稼ぐ鍵頒ち合ふ鳥総松          山口英二

1月10日(木)
      春着/今日の俳句 ※No.1159※
        竹生島行きの桟橋春着の子        山本洋子
        春着の子古き言葉をつかひけり      田中裕明
        遊びごころまだある春着畳みけり     成田清子

1月11日(金)
屠蘇/今日の俳句 ※No.1160※
        火の国に住みて地酒を屠蘇がはり    大島民郎
        屠蘇飲んでほろと酔ひたり男の子     原田浜人
        屠蘇注ぐや吾娘(あこ)送りきし青年に  加倉井秋を

1月12日(土) 
楪(ゆづりは)/今日の俳句 ※No.1161※
         楪の紅に心のある如く           町春草
         楪の柄のくれなゐに雪紬ぐ        古賀まり子
         楪や受け継ぐ父の鋸鉋           小原きよ

1月13日(日)
歯朶/今日の俳句 ※No.1162※
  ふるさとや石垣歯朶に春の月 芝不器男
青歯朶や後脚で立つ牧羊神(パン)の笛
       横山白虹
裏白を剪り山中に音を足す 飴山實

1月14日(月)
      福寿草/今日の俳句 ※No.1163※
         妻の座の日向ありけり福寿草       石田波郷
         針山も日にふくらみて福寿草       八染藍子
         日輪の福寿草の庭二歩三歩        阿部みどり女

1月15日(火)
子日草(ねのひぐさ)/今日の俳句 ※No.1164※
         日草日高く山を下りけり          山県瓜青
         子日草海原の日に手をかざし      則近文子
         子日草子の日の山を持ち歩く      中谷朔風

1月16日(水)
      葉牡丹/今日の俳句 ※No.1165※
         葉牡丹のふるさとの地の異人館    角川源義
         葉牡丹のいとけなき葉は抱き合ふ   日野草城
         葉牡丹を植ゑて玄関らしくなる      村上喜代子

1月17日(木)
薮柑子/今日の俳句 ※No.1166※
         濁世の真ん中にあり薮柑子       久保純夫
         洗ひ場に湯気こもりけり薮柑子     長谷川櫂
         薮柑子夢のなかにも陽が差して     桜井博道

1月18日(金)
       枯菊/今日の俳句 ※No.1167※
         火の中に枯菊の花沈みけり       京極杞陽
         枯菊に鏡の如く土間掃かれ       星野立子
         枯菊に午前の曇り午後の照り      桂信子

1月19日(土)
      枯芭蕉/今日の俳句 ※No.1168※
         禅寺にひそやかに立つ枯芭蕉     小寺正三
         枯芭蕉いのちのありてそよぎけり    草間時彦
         枯芭蕉折れたる茎の支へあふ     棚山波朗

1月20日(日)
       枯蓮/今日の俳句・第1169号
         枯蓮の神経質に折れゐたり       塩川雄三
         枯蓮をしばらく濡らし日照雨かな     津田経子
         枯蓮のうごく時きてみなうごく       西東三鬼

1月21日(月)
       冬菜/今日の俳句 ※No.1170※
         月光に冬菜のみどり盛りあがる     篠原梵
         人のかげ冬菜のかげとやはらかき   桂信子
         地に置けば幸ある如し冬菜籠      倉橋羊村

1月22日(火)
      白菜/今日の俳句・第1171号
         白菜の山に身を入れ目で数ふ     中村汀女
         洗はれて白菜の尻陽に揃ふ       楠本憲吉
白菜を洗ふ双手は櫂の冷え       大木あまり 

1月23日(水)
      葱/今日の俳句・第1172号
         武蔵野や流れをはさみ葱白菜     臼田亜浪
         葱抜くや人をはるかとおもひつつ    山上樹実雄
         下仁田の土をこぼして葱届く      鈴木真砂女

1月24日(木)
       大根/今日の俳句・第1173号
         生涯を大根引きて生きて来し      保坂加津夫
         心籠め大根を煮る湯気籠る       村越化石
         五箇山や干大根の黄ばみつつ     大山なぎさ

1月25日(金)
      人参/今日の俳句第1174号
         人参の豊かなる紅シチュー煮る     長坂由香理
         胡蘿葡と書いてにんじんてのひらに   星野麦丘人
         夜鷹いてこの日人参ばかり買う     岸本マチ子

1月26日(土)
      蕪(かぶら)/今日の俳句 第1175号
         大鍋に煮くづれ甘きかぶらかな     河東碧梧桐
         赤蕪を切なきまでに洗ひをり       友岡子郷
         その道のひとの一言蕪汁         中村房枝

1月27日(日)
      冬草/今日の俳句 第1176号
         冬草や少年はすぐしゃがみこみ     津田このみ
         冬草に黒きステツキ挿し憩ふ       西東三鬼
         病む三鬼杖にてさぐる冬の草       沢木欣一

1月28日(月)
      柳葉魚(ししゃも)/今日の俳句 第1177号
         飄々と紙よりかろき柳葉魚喰ふ      勝又木風雨
         膨れ来し河口の潮やししゃも群来(くき)  堀内素耕
         北国の日照時間柳葉魚干す        山口甲村
      
1月29日(火)
      枯蘆(かれあし)/今日の俳句 第1178号
         枯葦や湖賊が夢の丸子船         前川嘉風
         枯芦を金色の日がつつむなり       柴田白葉女
         日当って枯蘆原のかげもなし        高浜年尾

1月30日(水)
       枯萩/今日の俳句 第1179号
         枯萩を起せば影の生まれけり       松本三千夫
         鶴塚に日のふりそそぎ萩枯るる      宮内林童
         萩叢と見分かぬまでに枯れつくし     伊藤白水

1月31日(木)
      竜の玉/今日の俳句 第1180号
         雑俳にたましひありぬ竜の玉        成瀬櫻桃子
         ひとり子のひとり遊びや竜の玉       板橋美智代
         竜の玉旅鞄よりこぼれ出づ         山崎ひさを